1992年 新年
☆神無月貧乏神も居ないはず
☆善戦と言えば励まし丸くなる
☆村落を左右に裂いた電車路
☆起こされて祝辞をもらう啓老日
☆跡継ぎも無くて老舗の店仕舞い
☆蝉は鳴き蟻は泣かずに蓄える
☆ハイテクの人形劇が輸出され
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1992年 7月
※特別にやさしさ示し勘ぐられ
☆山選び友も選んで山登り
☆肩の荷をおろし昔を偲び老ゆ
☆人生の後先同じ道数多
☆喜怒哀楽五百羅漢の表情に
☆たぎる湯に生蟹入れる料理人
☆僚船の汽笛鳴り交う佐渡通い
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1992年 2月
☆叩かれた木魚は余韻吐き出さぬ
☆正月は休んでほしい普賢さま
☆老春は聞き手見る手に宗旨替え
☆百八つ数えるうちにねてしまい
☆余生とは何もやらない年用意
☆逃げた魚泳ぎ巧みに太太し |
1992年 8月
☆二艘舟斜めに浮かぶ佐渡ヶ島
☆旅をして海を見る都度母憶う
☆老骨は時代おくれの歌が好き
☆咲いて散る愛染めかつら歌史綴る
☆ほほえみに勝る化粧は無いと知る
☆和を保つための莫迦なら莫迦でよし
☆迫力の博多山笠盛り上がる |
1992年 3月
☆暖房に緊張くずすチュウリップ
☆頬被りすれど月光覗き込む
☆黒帯の首の太さに賭けている
☆地に落ちた芋虫バブル動けない
☆大地震大黒柱大丈夫
☆恋のボート時の経つのは気にならぬ
☆太平洋臨む日本の水仙花 |
1992年 9月
☆いやなこと早く忘れる呆けはじめ
☆世直しのことなら弾む政治狂
☆見たテレビ翌朝刊で確かめる
☆山笠の天より賜う力水
☆色白の悪女仕立てるサングラス
☆さわやかな涼風届く金メダル
☆あの時の亡母の気持ちがよくわかる |
1992年 4月
※話すほど話につられ長電話
☆貴重品だった卵の自尊心
☆金メダル春の先駆け福寿草
☆四月馬鹿嘘つく猫の甘え声
☆変わり目は波乱変転やっと春
☆検死娘の名前連呼し父無念
☆バス停の三つ目からは万歩計 |
1992年 10月
※太陽に近いところへ山登る
☆年寄りは赤い夕陽に恋をする
☆雑草の自由の力嫌われる
☆受験期のネジを巻かねば母あせる
☆仏頂面こればっかりは親ゆずり
☆思い出の歌に年寄り若返る
☆甲子園汗と涙の砂土産 |
1992年 5月
☆山覚め雷音しきり吠えている
☆春の海人食いサメがにくらしい
☆花待たず医師に抵抗尊厳死
☆木爪の花色鮮やかに呆けていず
☆いつの世の米騒動も皆懸念
☆延命の苦痛望まぬ尊厳死
☆納得の対話が出来ぬストライキ |
1992年 11月
☆安定の三本脚に卒が無い
☆辿りつく三途の川が国境い
※老いて待つ赤信号が長すぎる
☆生き残るための粘りが不充分
☆思い合うゆとりも出来て旅に立つ
☆天に雲地に霧が湧く神代の絵
☆慰安婦の今更エイズとは言えず |
1992年 6月
☆金儲け主義のリゾート止めなされ
☆再開を喜び合って抱きしめる
※風光り野にも山にも人満ちる
☆石骨の億年前の祖先見る
☆飽食の猫におそれは無い雀
☆筍を描きピラミッドにも見える
☆掛け合いを田蛙の声引きとめる |
1992年 12月
☆野良猫の縄張り厳し恋烈し
☆停年の無い妻はしゃぎ二人旅
☆泡ぶくもとけて流れて水となる
☆卒業子母の涙を見てしまう
☆リハビリへ再起のラッパ妻が吹く
☆五ヶ条と五つ釦を偲ぶ老い
☆関取の嫁取りニュース派手にする |