1990年 新年
☆白菊に霜終章の美を残し
☆世の無情日の当たらない紅葉散る
☆マルタからヤルタ見直す両巨頭
☆我もまた難民だった帰還兵
☆愛煙の果ては肺癌とは悲し
☆天の邪鬼こんな子供に誰がした
☆若者のポンコツそれが恍惚だ |
1990年 7月
☆客運ぶ砂丘駱駝の深まつげ
※君のため作って見せる蜃気楼
☆学生は天安門に小瓶投げ
☆ブレーキを踏まぬ自由は行き過ぎる
☆僅少の段差も恐い年となり
☆秀吉の勘気にふれた黒茶碗
☆久闊の肩叩きあう五月晴れ |
1990年 2月
☆何も彼も初を冠せて目出度がり
☆山登り山に征服されに行く
☆頑張って生きよう老いの合言葉
☆マドンナは苦労の重荷背負いこみ
☆ただが白黒されど本因坊をかけ
※普段着のままで旅する恋もある
☆ベルリンの壁崩れ落ち波及する |
1990年 8月
☆面白い世界のドラマまだ死ねぬ
☆問題はオゾンホールを誰が塞ぐ
☆朝顔の縋る相手を好き嫌う
☆豊かさがだんだん怖く敵殖える
☆警戒の心無くした深眠り
☆一刀無惨節くれ松の枝落す
☆水鉄砲馬穴の間に合い父が決め |
1990年 3月
☆欝の子は石ころ見つけ蹴りたがる
※寒椿我慢ばかりはしておれず
☆通る人チェックしている辻地蔵
☆からみ合うテトラポットに泡の花
☆注連飾る天馬を牽いて夢の旅
☆棄てる神助ける神が譲りあい
☆山移すために老馬も駆け出され |
1990年 9月
☆くま蝉が応援をする草野球
☆近代の猫は鼠がおそろしい
☆老夫婦互にシミを笑い合う
※口紅の彩にはじまる娘の思春
☆粘り腰耐えた柔の粘り勝ち
☆浮かれ出た蚯蚓ひからび蟻の摯
☆暑い日に亡母は私を生み給う |
1990年 4月
☆ゆっくりと休みしっかり働かす
☆落椿掃かず拾わずほって置き
☆幸せは少し退屈草むしる
☆うたた寝の過去も未来も夢の中
☆シナリオと違う余生となるおそれ
☆戦記もの読んで同意と異議があり
☆創られた伝説で佳し建国日 |
1990年 10月
☆炎天に美人はいつも涼しそう
☆わが不眠猫も夜通し屋根歩く
☆その時に嫌になったり好きになる
☆いたずらをされたがる花蜂の腰
☆公園を一夜で流す筑後川
☆きょうちくとう終戦の花として燃え
☆有刺鉄線風も痛いと泣いて吹く
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1990年 5月
☆地価騰貴ビルの外壁落ちている
☆春闘に相槌打つは女子社員
☆青首をもたげ大根花咲かす
☆一斉に散らないさくらあってよい
☆ふっくらの乳房がねらいピカソの絵
※必要を自認するから生き残る
☆その昔風呂屋帰りのクシャミ坂 |
1990年 11月
☆長寿国痴呆防止の本が売れ
☆潮まねき鎌で合図のラブコール
☆りんりんと鳴くすず虫にはげまされ
☆水撒けば草いきいきと礼を言う
☆英霊の供養のために生きらねば
☆同窓会やもめ幹事がかかり切り
※追越して追越されても仲が良い |
1990年 6月
☆大学生いついつ迄も孫は孫
☆村おこし動力水車見直され
☆休息の淀みの水が流れ出し
☆ボーフラの生れる水に毒は無い
☆老い進み喜怒哀楽は薄くなり
☆記念日は改憲護憲競い合う
☆若者はロマンを求めて科学する |
1990年 12月
☆雲海の果てに樹海の高野山
☆身構える子猫は既に野良の貌
☆近代化講和は耳の痛いこと
☆藤の姓嫌う韓国追って来る
☆こおろぎと仏語を交す遍路宿
☆何にでも首を突っ込む情報屋
☆虫の音に月見の会話まん丸い |